起業家物語

【Case5】ほころびかけた家族の絆を再生するために・・・ 下田ひとみ氏

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 「目が足りないし、人が足りないんです。」

彼女は、現在の社会が抱える問題の本質をズバリと指摘する。

 

児童や高齢者への虐待。

高齢者の孤独死。

「家族」とはなんなのだろう?

そんな問いを発したく様なニュースが日々流れる。

 

そんな社会を生んだ犯罪者探しをする議論は、テレビで多く見かけるが、

自分がそれを解決しよう、という話はあまり耳にしない。

そんな中、小さいながらもある取り組みを始めた女性がいた。

下田ひとみ氏だ。

 

 

 

自分の代わりに寄り添ってくれる人を・・・


 

しばらく連絡を取っていなかった、お母様に電話をした時、

「この間まで入院しててね・・・」という話をされたそうだ。

その話を聞いて、下田氏は慌てふためいた。

まったく初耳の話だったからだ。

 

 

恐らく、お母様も遠方の娘に心配をかけたくない、という思いで黙っていたのであろう。

しかし、何か大事がおこった時、自分がすぐに駆けつけられない地にいることがもどかしく感じた。

下田氏は大阪、お母様は宮古島という沖縄の離島暮らし。

その距離は決して短いものではない。

 

そう考えると、気になる事は幾つもある。

庭の手入れは重労働だし、

地域の習慣として祭りごとも多く、その食材の買い物など。

心苦しい想いを抱えたまま、自分は目の前の仕事に忙殺されていた。

 

介護の現場で垣間見た悲しい「なすりあい」


 

下田氏は、小学校六年の頃から、宮古島で暮らしていた。

この地は、みなオープンで、まるで親戚のように、ご近所と親密な付き合いがあるのが普通だそうだ。

高校卒業後、大阪に出てきた際も、彼女自身、人と接することが好きだという理由で、福祉用具の営業職に就いた。

その後、ケアマネージャーとして働くが、その時、忘れられない経験をする。

 

ある老婆は骨折による入院を機に、軽度の認知症を発症した。

身体的には退院可能な状態に回復したものの、ケアプランを作成するにおいて、誰かが面倒を見るか、有料サービスを受けなければ一人では生活ができない状態だった。

それに対し、5人いた子供の意見は割れ、「面倒を見るは嫌だ。」「お金を出すものいやだ。」と大喧嘩を始めた。

 

このような事例は、“当たり前のように起こっている”。

そんなことを知るのに、多くの時間はいらなかった。

悲しい現実を目の当たりにし、外見上平静を装うものの、心の中をざらざらとした肌触りの悪い思いが去来する。

何かがおかしい・・・。

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遠方にいても親孝行ができる仕組み


そうこうしているうち、自分も結婚し、子供を授かる事となった。

子育てに奮闘するまっただ中で目にする、子供への虐待のニュースは、怒りというより強い悲しみを感じた。

やはり、何かがおかしいのだ。

 

そんな中、彼女は一歩踏み出すことを決心する。

まずは、高齢者を対象に、一般的な居宅介護支援事業者としてのビジネスをスタートさせた。

そして次に始めたのは、介護保険の対象とはならないものの、日常生活の中でお困りの家庭のための、家事・生活支援をスタート。

 

自分自身が、実家の掃除をしてあげたい、とおもっても、そのためだけに実家に帰るには時間的な制約がある。

「私の代わりに、実家を掃除してくれる人がいれば・・・」

そんな思いを商品化した。

 

家事・生活支援の仕事を、一つ一つの作業の料金表を作った。

そして小さな単位の金券を発行し、いつでも、必要なだけ、必要なサポートを受けられるような仕組みを考えだした。

これを、遠方に住むお子様が買っていただくことも可能とした。

コンセプトはさながら子供が作る「お手伝い券」のようなものだ。

 

彼女は言う。

「家族が絆を取り戻すためには、高齢者のサポートだけでは不十分なんです。

高齢者を介護するのは、その次の世代です。

そこにはお子さんもいるかもしれない。

そうすると、その介護をする方のサポートも必要なんです。」

 

その熱い想いから、ベビーシッター、お子様の送迎サポート、一時保育、家事支援などのサービスをスタートさせた。

 

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見たい世界に。


しかし、彼女の動きはまだまだ止まらない。

「宮古島は、近所の人がみんな親戚のような付き合いをしてるんです。

この町が、そんな町になれば、一人で介護に苦しむこともない、一人で育児に苦しむこともない。

町ぐるみで、人を、家族を育てていく事ができるはずです。

 

そこへの懸け橋として、彼女は年間を通しての文化講座の開催を計画していたり、独自の会員証を作り、地域の商店との様々なコラボレーション企画を現在計画中だ。

今、彼女は起業して、まだ6か月である。

 

 

彼女の壮大な計画を聞いた時、私はマハトマ・ガンジーのこの言葉を思い出した。

 

見たいと思う世界の変化に
あなた自身がなりなさい。

 

まさに、彼女はその実践者なのかもしれない。

 

 

 

下田 ひとみ 氏

株式会社あたらすファミリーDCIM0939

 

代表取締役

 

 

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