起業家物語

【Case9】明日死んでも後悔しない毎日を送る~歯科衛生士が声優を目指した理由  狩野幸 氏

ほんの数日前まで見えていた、心躍るような明るい未来が、

一瞬にして、可能性の扉を閉じることがある。e999a3aa39563dd2d0a6b4ed8707134e_m

幾千もの可能性が、一気に狭まった時、

私たちはいったいどうすればよいのだろう・・・。

 

今回の主人公は、歯科衛生士として働きながら、

声優としてのデビューを目指して全力疾走する女性、狩野幸氏だ。

 

突然の暗転

 

小学校時代、彼女は趣味である漫画を描いては雑誌社に投稿していた。

中学に上がるころには、その力量が認められ、漫画雑誌社から声がかるほどだった。

 

「幸のやりたいことを精いっぱいやればいい。」

ご両親からはそう言われ、彼女は自分に誓った。

自分の可能性をどんどん広げていこう!

そう思った矢先、ある出来事をきっかけに、その状況は一変する。

 

たった一人の兄に、重篤な病気が見つかったのだ。

 

これまで、自由だった彼女の未来は、可能性の枝を一気に減らすこととなった。

経済的に自立するため、高校を卒業してすぐに働くことを勧められた。

漫画家という夢を追う事に罪悪感さえも感じざるを得ない状況の中で、彼女は一旦筆を折る。

未来の夢より、今の生活を優先せざるを得なかったのだ。

 

変わったのは、経済的な状況だけではなかった。

ご両親には、強い不安から、彼女を世の中のすべての“リスク”から遠ざけたい、という意識が強く働いた。

 

しかし、彼女の頭には、こんな思いが逡巡した。

こんなトラブルに左右されてしまっていいのだろうか?

突然病に伏した兄を見ているからこそ、後悔のない人生を送らなければならない。

そう心の奥底から湧き上がるものを感じた。

 

後悔しないためにも、せめて短大でも卒業しておきたい。

その思いを両親にぶつけ、家族に経済的に迷惑をかけない事を約し、短大に進むことにした。

選んだ学校は、歯科衛生士学校。

選択理由は、単純だった。

始めの1年を奨学金でしのぐことができるからだ。

 

アルバイトで学費を稼ぎながら卒業し、歯科衛生士としてのキャリアをスタートさせた彼女に、一つの出会いがあった。

「MFT」との出会いだ。

 

 

遅すぎた?遅いからこそ?

MFTというものは、口腔筋機能療法と呼ばれるもので、簡単に言うと、口の周辺の筋肉を鍛える訓練法といえる。

簡単なトレーニングで、歯並びの正常な状態の維持や、滑舌の改善などを目指すもの。

まだ、日本ではあまり一般的な言葉ではないMFTを、彼女は歯科衛生士の仕事の中でたまたま耳にした。このMTFに関心を持ち、時には東京までセミナーを聞きに行ったり、独学で学びを深めているという。

 

MFTを通じて「滑舌」に注目している中、彼女はあるアイデアを思いつく。

自身の滑舌の訓練の一環として、声優養成所に通おう、と。

そこで彼女は、「演技」というものに出会い、後頭部を殴られたような衝撃を受ける。

「演技というのは、これほどまでにも奥深いものなのか。」

学べば学ぶほど奥深さを感じる「演技」というものに、

押さえることができない胸躍る興奮を感じずにはいられなかった。

 

しかも、表現手段が「声」のみに制約される声優は、表情で演技できる俳優とはまた違った難しさがある。

MFTを学んだ自分だからこそできる、声の演技。

これこそ自分が進むべき道ではないだろうか。

「私は、声優になる。」

彼女は心に固く決意した。

 

 

とはいえ、声優としてデビューするには、年齢的なハードルがある。

彼女は言う。

「そもそも、声優としてスタートする年齢としてはちょっと遅いんです。だからこそ、そういった年代の人が自分もチャレンジできるかも?と思っていただけるよう、その道を作る事が出来たらいいな、と思います。」

 

漫画家を目指していたころ、彼女が雑誌担当者によく指摘されていた事は、「人生経験が浅いため、物語に広がりが足りない」という事だったという。

声優業においては、逆に、人生における経験値が彼女の武器にはなりはしないだろうか?

彼女の話を聞きながら、そんな事を考えた。

 

 

回り道と見えたものが・・・

 

歯科衛生士が声優を目指す。

一見、つながりが希薄にもみえるこの流れは、MFTの知識で繋がっている。

この事は、例えば、声優の発声を練習する際に、具体的にどこの筋肉をどのように鍛えればいいかに役立っているという。

 

私は質問した。

「それって、将来的には、声を仕事にする人の指導ができるのではないですか?」

彼女は答える。

「はい。最終的にはそうなりたいな、と思ってます。

また、小さいうちからこういうトレーニングをすると、歯の並びが改善する事もありますから、絵本のようなものも出版できたらいいな、と思っています。」

 

絵本ならすぐにでもできそうですね、という言葉を遮り

彼女は強調する。

「まずは、声優になる事。そこからがすべてのスタートです。」

 

今を生きる

 

彼女は言う。

「悔いなき人生を送りたいです。

どんなに健康でも、どんなにうまくいってても、いつ何が起こるかわからない、という事を身を持って知りました。だから、今を精いっぱい生きよう、と。」

「また、声優の分野では、私が成功することで、20歳代後半でもまだまだできる、そう思ってくれる人の道を作る事が出来たらいいな、と思います。だから、一日も早く私が声優としてデビューする必要があるんです。」

 

どうやら、彼女にとって声優デビューは、通過地点でしかないようだ。

別れ際に彼女はこういった。

「1年に一つは必ず新しいことを始めようって、決めてるんです。」

学生時代にシフトダウンした時間を取り戻すかのように、

トップギアで走り続けるつもりらしい。

 

 

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狩野 幸

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  1. 2015年 10月 05日
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