起業家物語

【Case1】不安を感じる暇なんてなかった   中野庸起子先生

 

「女にできるわけがない」b4d481d38ca63e8cb70cb64118b3801f_s

心無い言葉を浴びせられた。

 

そんな言葉には屈したくない。

だから、妊娠中も、出産後も無我夢中で働いた。

仕事を休んだのは、出産前後の1日くらい。

出産後は子供を事務所に連れて働いた。

 

しかし、振り返って思う。

この時の経験は、自分にとって決してマイナスではなかったと。

 

 

独学で難関資格を取得した裏にあった事情とは・・・?


 

中野庸起子氏。

現在は、ひまわり法務FP事務所 代表、有限会社向日葵総合事務所 代表取締役として、

行政書士の仕事を軸に、講演・講師、企業への研修事業なども手掛け、忙しい日々を送っている。

保有する資格は、行政書士、マンション管理士、AFP、住宅ローンアドバイザー、モーゲージプランナー、DCマイスターなど、数えればきりがない。

資格を取得するだけではなく、資格取得を支援する講師としても活躍中だ。

 

 

彼女のキャリアのスタートは、平成16年にさかのぼる。

信用金庫勤務、法律事務所秘書といった経験を経て、結婚退職。妊娠を契機に、独学で行政書士の資格を取得した。

しかし、もともとは、行政書士を目指したわけではない、という。

 

彼女が、資格試験にチャレンジする前、お父様が司法書士事務所を開業されておられた。しかし、中野氏24歳の時に、そのお父様がお亡くなりになられた。

その後、主を失った司法書士事務所を、お母様が引き継ぎ、オーナーとして管理をされることとなった。しかし、その運営はなかなかに難しい。若い先生を雇い入れるものの、思ったように仕事は回らない。その母の苦労を知った時、中野氏は決心する。

自分がこの仕事を引き継ぎ、母を楽にしてあげたい・・・。

 

そして、ちょうど信用金庫に勤務していたときに、大病にかかり、主治医から生活の変化が一番の療養であることを告げられたことも決意のきっかけだった。

 

しかし、司法書士試験といえば、日本における文系資格の最高峰ともいえる弁護士資格と並ぶ難易度だ。出願者数に対する合格者数が、平成24年で2.86%という狭き門。

中野氏はこの資格に挑んだものの、2年にわたって0.5点に泣き、合格できなかった。

その過程で、試験科目が一部かぶっている行政書士の資格は取得することができていた(行政書士の資格も出願者ベースで7.26%と決して簡単な資格ではない)ため、行政書士としての起業を決意する。

 

彼女はそのことを振り返ってこう表現した。

「確かに、10回にわたって試験に落ち、そのうち数年も僅差での不合格が続いたのは、つらかった。けど、縁がなかったんだと思います。むしろ、良かった。おかげで、行政書士という仕事を迷うことなく選択できましたから。」

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人とのつながりがもたらすもの


 

行政書士の仕事といえば、簡単に言ってしまえば、役所への提出書類や公的な契約書類の作成、という事になる。私のイメージだと、マイカーの登録や、法人登記などの際に、ディーラーや銀行などに紹介された行政書士の先生が、ささっと手続きを(多くの場合はお目にかかる事さえない)済ませてくれる裏方のイメージが強い。

継続的な顧客との接触は決して多くない職種、と私は認識していた。

 

しかし、中野氏はこういった仕事ばかりではなく、積極的にクライアントとかかわるシーンがあるようだ。

実際に話を聞いてみると、クライアントとともに、泣き、笑い、喜び合う姿が目に浮かぶような感情豊かな方である事がよくわかる。

そうして、彼女とかかわったクライアントは、新しいクライアントを連れて、彼女のもとを訪れる。この連鎖が、仕事の安定を生み、創業から4~5年で収入が安定し始めたという。

 

この仕事、ビジネスライクに進めることも、恐らく可能であろう。

一見、その方が効率が良いようにも見える。

しかし、彼女はあえてクライアントと、心を通じさせることで、紹介で人とつながり、結果として安定的な事務所運営に繋がっているようだ。

 

 

石橋は、叩いて崩れなければ渡ってみる


 

取得資格の数のみならず、彼女は多くのビジネスを手掛けている。

例えば、確定拠出年金の導入サポートであったり、比較的近いところでは、マンション管理士の資格も取得している。

講演の回数は、年間100回を超え、この10年間の累計では658件にも及ぶという。その中には、行政書士とかかわる法律関連の事だけではなく、新入社員研修や、リーダーシップ研修、さらには大学での学生への授業を受け持ってさえいる。

 

このバイタリティは、どこから来るのか。

私はそこに強く関心を寄せた。

 

中野氏は言う。

「大抵、新しい事をするとき、人は石橋をたたいて渡るんだと思います。普通は、コンコン、と叩いて、大丈夫かな?と考えてみて、恐る恐るわたるんだと思うんです。けど、私の場合は、コンっと叩きはするけど、崩れさえしなければ、そのまんま渡っちゃうんですね。考えて動けなくなる前に、動いちゃうんです。」

確かに、はたから見ていてそんな側面は見て取れる。

とにかく、行動量が半端ではないのだ。

 

さらに、私は聞いてみた。

「では、行政書士として、起業するときもやはりそんな感じだったんですか?」

そんな問いに、中野氏はこう答えた。

「はい。その時、相応の額の借り入れもしました。けど、やってみなくちゃわからないじゃないですか。面白いもので、無我夢中でやってると、気が付いたらそれなりに仕事があるし、借入金も5年での返済計画が3年で完了しました。不安を感じる暇なんてなかったような気がします。

 

 

大きな決断をするとき、私自身は、怖気づくことがある。

そんな思いを、彼女の前で口にした時、中野氏はこうおっしゃった。

「もちろん、私も全く何も考えなしではなかったです。常に、5年後のビジョンを持ってました。緻密な計画ではないけど、こうなりたいな…という姿です。けど、とりあえず取り組んでみて、一生懸命やれば、そうそう失敗ってないんじゃないかな、と思います。無謀にも、起業したときだって、借入だって何とかなりましたから。確かに、その時々に大変なことはあります。けど、振り返ってみると、気が付いたら乗り越えてた(笑)」

軽くいう彼女の強さを、そこに見た気がした。

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人の未来に資することができれば・・・


 

最後に、彼女の今後について聞いてみた。

 

これまでも、色んな事に手を付けてきたけど、それぞれに軸があると。

例えば、冒頭にもある通り、彼女は自身の起業時、女性であることで、いやな思いをしたことがある。未だに、そういう心無い声を耳にすることもあるようだが、女性であることで

「やりたい」を思う事をあきらめることがない、というような社会であってほしい、と強い思いを持っている。

そして、すでにこの世からいなくなってしまった両親への恩返しを、自身の活動で後世に残したいという思いが湧いている。だから止めてはいけないのです。

 

かといって、全ての女性が社会に出ることが良い、というわけではなく、主婦を選択するもよし、ビジネスを選択するもよし。いずれにせよ、女性が選択肢を持て、そういった女性が一歩踏み出すところで、自分の経験が役立てば・・・と講演などで、自身の経験を語り、ブログなどでも情報を公開している。

 

また、現在、「考える」という事ができない若者が多い、という事に問題意識を持ち、大学では「考える」という癖をつける授業を企画し教鞭を振るっている。また、そこで蓄積したノウハウを、企業研修などで応用している。

 

そして、FPの地位向上。

まだまだ、ファイナンシャルプランナーという技術だけでビジネスとして、成立することは少ない日本において、こういった専門家の普及にご尽力されている。

 

 

一言で言えば、多くの人たちの未来へ続く道を作りたい、という思いがその根底にあるのではないか、と思う。

「一日一日を大切に」「継続は力」という事をモットーに、彼女は今日も忙しく動き続けている。

 

中野庸起子 先生nakano

1973年生まれ 行政書士

ひまわり法務事務所 代表者

有限会社向日葵総合事務所 代表取締役

ブログ:子育て奮闘中ママ行政書士FP

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