起業家物語

【Case2】死と隣り合わせの場所で、自分を救った言葉   奥江裕理氏

17歳。
多くの人にとって、最も輝かしい時期だと思う。
この時期に、閉鎖病棟で死の覚悟をした人がいる。

もともと、彼女は活発で責任感の強い少女だったという。
しかし、強い責任感ゆえ、人の評価を気にし、「良い子」である事を自分に課していた。
そのプレッシャーが、ピークに達したとき重度のメンタルヘルス不全を起こす。
1年半の精神科での生活。
もう、生きる意味が見いだせず、死の影を垣間見たものの意識が戻った翌朝、
ある言葉が心に浮かんだ。
その言葉とは・・・
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代えようのない体験を生かして


 

奥江裕理氏。

現在は、NPO法人日本メンタルヘルスケアサポート協会を立ち上げ、その代表に就任している。

より多くのメンタルヘルスケアのできるカウンセラーを養成し、彼らが活躍することで、日本にメンタルヘルス普及を行い、人や会社を元気にする活動を行っている。

そのために、メンタルヘルスカウンセラーを志す人に負担を強いないよう、短期間でのカリキュラムが組まれ、資格認定後のサポートにも力を入れることで敷居を低くしているとのこと。

 

昨今、様々な形で心の健康管理の重要性がメディアに取り上げられるようになり、

企業では職場のこころの健康に関する維持管理が義務付けられる予定。

その背景には、やはり数多くのメンタルヘルス不全が発生していることがある。

 

彼女がこの仕事を始めたのは、やはり高校生時代の自身の体験によるところが大きい。

「自分と同じような苦しみを味わう人が、一人でも減ってほしい」、という強い想いでこの事業を立ち上げられた。

 

ある言葉が死の淵から自分を救ってくれた


 

気になるのは、1年半もの入院生活から、どのようにしてここまで歩んでこられたかだ。

 

実は、彼女は、メンタルヘルス不全に陥る前、学校の教師から勧められ、ある本を読んだという。

その本は、聖書について書かれた本。

それまでは特段、聖書に親しんでいたわけでもなく、教会に通っていた経験もない。

しかし、せっかく勧められたのだから、と目を通していたものの、内容はすっかり忘れてしまっていた。

 

その後、入院したものの、病気はさらに進行し、ある夜、両親と医師の話す声が聞こえた。

「今日が峠です。」と医師。母のすすり泣く声。

死を意識して、眠りについた次の日、彼女は生きていた。

窓から差し込む朝日が目に当たり、生きていることを確認したその時、この言葉が頭の中に浮かんだという。

「自分らしく生きる」

 

 

これまで、他人の評価を気にしながら生きてきた自分に別れを告げ、誰の人生でもない、自分自身の人生を生き始めた瞬間だ。

 

ふとこれまでの自分を振り返った時、「人の笑顔」を見た時に自分が満たされた事を思い出し、その時、彼女は決心した。

「誰もが経験するわけではない、自分の経験を生かした仕事をしよう。」と。

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人の悩みが自分を突き動かした


 

退院後、大学を無事卒業し、アルバイトで学費を稼ぎながら心理カウンセラーの専門養成機関に通った。

アルバイトは、バーテンダーや飛び込み営業、工場での仕事やエステティシャンなど様々な事を経験し、その経験や人とのつながりは今の仕事でも生きているという。

 

そして、S&P(Sprit&Recovery)社を設立。企業向けに、コミュニケーション研修などを行い始めた。

 

そんな時、ある参加者から相談を持ちかけられた。

「主人がうつ病で1年半も苦しんでいるが、全く治療の成果が見えない。どこか、いい機関はありますか?」

というものだった。

 

私がそんな機関を作ろう。

反射的に頭に浮かんだらしい。

 

ただ、自分がカウンセラーとしてかかわっている間は、残念ながら助けることができる人数は限定されてしまう。

だから、より多くの人が心の健康を取り戻せる仕組みを作らねばならない。

そのためには、メンタルヘルスケアをサポートできる人間を育てる事が、もっとも近道だという思いに至る。

 

 

 

 

「終局の目標は、こういったメンタルヘルスに関する仕事が成立しない世の中を作る事。」

と、彼女は遠慮がちにおっしゃった。

つまり、メンタルヘルスに関して誰一人悩む人がいない世界を実現したい、と。

 

とはいえ、全てが順調というわけではなかったと思う。

そこで、少し聞いてみた。

新たなことに取り組むとき、不安になったりしませんか?と。

 

彼女は即座に答えた。

「頭で考えると、不安になったりすることもありますし、感情がついてこない事もあります。

しかし、感情がついてこなくても、無理やりにでも足を一歩前に出すんです。

足が動かなければ、手を使ってでもいい。

すると、進んだ一歩分、世界が変わります。

それを繰り返しているうちに、心もついてくるんです。」

 

彼女の想いは、今、一歩一歩実現に向かいつつある。

現在は、全国各都道府県に一つずつの拠点開設のため、日々奔走されている。

 

彼女の努力の成果として、今日も、企業・個人のメンタルヘルスをサポートするカウンセラーが新たに生まれている事だろう。

 

 

 

 

奥江 裕理 氏1396015_542750729143710_2112644722_n

NPO法人日本メンタルヘルスケアサポート協会 代表 

ブログ:メンタルヘルスなひととき

株式会社アイディアヒューマンサポートサービス認定 心理カウンセラー

大阪商工会議所主催 メンタルヘルスマネジメントⅡ種(管理職対象)取得
大阪商工会議所主催 メンタルヘルスマネジメントⅢ種(一般社員対象)取得 JAA

アロマコーディネーター資格取得

 

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